『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』という"特撮"ドラマが面白い。

『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』というドラマが面白い。

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もう一度言いたい。この『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』という"特撮"ドラマが本当に面白い。

ジャニーズが主演?この時間帯に特撮?学園もの?(ターボレンジャーメガレンジャー的な?)、薄っすい事前情報だけで見始めたので、始めは変身するヒーローではなく、学校の文化祭とかでヒーローの劇をする高校生の話なのかな?なんて勝手に想像していたが、蓋を開けてみると、想像以上の特撮ドラマだった。

 

今ハマっている特撮の一つである『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』の個人的におおっ!!..と思ったポイントを紹介したいと思う。(ゼンカイジャーも面白いし、11月にはテン・ゴーカイジャーも期間限定上映があるし、2021年は戦隊が面白過ぎるやろ!!)

 

 特撮好きが気になってしまう要素が豊富

このドラマ、とにかく特撮好きならどうしても二度見してしまいそうな、贅沢な要素がふんだんに盛り込まれている。

まず目を引くのがアカレンジャーだ。このアカレンジャーが毎話毎話、アカヒーローである真中大成の前に登場する。アカレンジャーっぽい存在なのではない。れっきとした”アカレンジャー”が登場するのである。(彼しか見えない存在ではあるが。)

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こんな感じで見守ってくれたり、押し入れから出てきたり、どこからともなく現れたり..、なんとも豪華な客演である。

そんなアカレンジャーの声を担当するのは関智一さん。これまた特撮には非常に縁が深い方である。ゴーカイジャーのナレーション及びモバイレーツなどのアイテム音声が戦隊では印象に残っているが、個人的にはオーレンジャーのブルドント、メガレンジャーのビビデビのような、いたずらっ子な少年のような声が戦隊では心に残っている。

そんな関さん、なんとアカヒーロー・真中大成の父親役としても登場するのである。

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最近ではアニメ以外にも色々なドラマで活躍されておられるとのことだが、顔だしの俳優としての関さんは、個人的にはボイスラッガー以来なので、なんとも贅沢なキャスティングである。凄い。

他にも上げたらきりがないが、第2話ではキラメイグリーンの新條さんが(劇中ではキラメイダンスを踊っていた)、報道部顧問にはリュウソウジャーのナダ役の長田さんが、おそらく今後も特撮に縁のある方々が毎話登場するであろう、そんな予感がビンビンに感じるのである。

スタッフを見てみると、脚本に高橋悠也さん、ゼネラルプロデューサーに塚田英明さん、プロデューサーに大森敬仁さんと、戦隊や仮面ライダーなどに関わった錚々たる顔ぶれである。今後の展開に期待せざるを得ない。

キャスティング以外でも、オープニングは昭和戦隊を彷彿とさせるような懐かしい質感が出ている演出。(オープニング曲はKAT-TUNのオシャレなメロディーな所がなんだか新しい。)特撮おなじみのロケ地で、爆発満載の映像は特撮の本気度を感じる。自転車に乗っての登場なんかも、なんだか懐かしい気分にさせてくれる。(ダイレンジャーを思い出すからかな?)劇中では秘密戦隊ゴレンジャーが重要な要素になっているのだが、そんなゴレンジャーオマージュな演出を所々に盛り込んでいるのも、また良い。

そんなゴレンジャーの匂いが隋所に香ってはいるのだが、EDでは近年の戦隊よろしく、楽しくダンスを踊っていたりと、懐かしさと新しさが同居している感じも興味深い。

巨大戦がない戦隊ドラマを描く

戦隊シリーズの特徴の一つとして挙げられるのは、複数の機体が合体したロボットが戦う巨大戦がある。もうこの巨大戦がないと戦隊シリーズとしては物足りなくなるぐらい定着している演出なのだが、『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』ではゴレンジャーをオマージュしているのも多分に影響しているかと思うが、令和に描く特撮作品、またそれが戦隊シリーズを彷彿とさせる作品という中で"巨大戦がない"、というのはとても新鮮であった。(あの非公認戦隊アキバレンジャーでも巨大ロボが出ていたので、余計に斬新に感じる。)

さらに時間枠としても30分枠ではなく、1時間枠。戦隊シリーズでは中々ない尺でドラマが展開されていくので、人間関係であったり、各登場人物がヒーローになっていく過程を丁寧に描いている印象を受ける。巨大戦もなく、色々な武器やアイテムが登場しない分、事件の発生から、それぞれの人物の活躍、関係する周りの人々の心情、そして変身しての事件の解決、この辺りをじっくりと堪能できるのが、戦隊ドラマとしては、今までになかったように思える。ドラマパートに重心を置いているとはいえ、やはりこれは特撮ドラマなんだろうと思える演出が随所に感じられるので、このバランス感覚は上手いなぁ、と思う。

人間が怪人に変身するという、戦隊にはあまりない描写

学園を脅かす魔人が巻き起こす事件を学園防衛部が解決していくという、仮面ライダーフォーゼのライダー部のような雰囲気を感じさせる世界観なのだが、(魔人はゴレンジャーの仮面怪人をモチーフとしているが、デザインはこちらの方が中々に怖い。)この魔人、負の感情を持った学園の生徒が変身するという形で登場する。仮面ライダーシリーズでは、このように人間が怪人に変わってしまう描写は当たり前なのだが、戦隊シリーズでは見ることがなかった描き方なので、個人的にはこの部分は新鮮であった。(リュウソウジャーのマイナソーはこの描写に近いかもしれない。)

戦隊では意外とありそうでなかった演出をこのように盛り込むことによって、色々と新しい発見がある。例えば、

  • 人間が怪人に変身することで、事件を解決していく流れでは戦隊側と周りの人たちとの接点や関りから生まれてくる掛け合いがとても多くなる。
  • ミステリー的な要素と多人数の戦隊ものとの組み合わせも意外と良いかもしれない。
  • 人間が怪人に変身すると、どうしても怪人になってしまった側からの視点も描かないといけない分、1時間という尺の長さがあって出来る演出なのか?もし30分枠だと、どのように描かれるのだろうか?色々と妄想が広がる。
  • 人間関係や行動範囲が絞られてくる学園と言う閉鎖的な空間があってこそ出来る演出なのか?もしかすると、もう少し範囲を絞った世界観で活躍する戦隊も面白そうかもしれない。(仮面ライダーWの風都しかり。)

などなどと、今まで見なかったような描写をほんの少し加えることによって、色んな可能性や妄想が広がってくる。戦隊シリーズというものは、長年続いているものだけあって、一方ではマンネリ化との戦いでもある。特に戦隊は、色分け・名乗り・巨大戦などなど、戦隊ならではの伝統とでも言うべき特徴的な文化がある。どうしても似たり寄ったりして、飽きられてしまいそうな中でも、戦隊の歴史は今までに本当に色々なアイディアを取り入れて、変化・挑戦を常にし続けてきた歴史でもあると感じる。その意欲的な変化を受け入れることで、今日まで魅力的な戦隊ヒーローを世に生み出してきた。そのどれもが個性的で、違いがあって、カッコいいんだよ。

『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』の細かな演出の数々からは、そういった変化を恐れない戦隊シリーズが築いてきた『らしさ』を感じることができる。

 

まだまだ語りたい部分は色々あるが、今週8月21日放送では、前話でもチラっと登場していた『モモヒーロー』に焦点を当てた話になり、ついに5人が揃う。しかし、『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』においてのピンクのヒーローはジャニーズが演じることになる。予告でも大成が「ダメだ。モモレンジャーは女性なんだ。」と台詞を放っていたように、ピンクが女性でなくても全然良いじゃん、という流れに対して、ピンクは今まで女性が担ってきた、という戦隊の伝統をぶつけてくるあたり、次回はどんな話になるのか?戦隊の色分けについてここまで真正面に向き合うような話の展開に期待が高まる。

誰でもピンクのヒーローになっても良いと思うし、誰でもレッドのヒーローになっても良いと思う。多様なヒーロー像があれば戦隊の可能性ももっと広がると思うし、今までの戦隊の歴史が見せてきたように、色々な形の戦隊ヒーローから生み出される様々なカッコ良さを自分自身とても見てみたい。

 

ゴレンジャーオマージュを随所に感じられ、戦隊愛にも溢れており、新しい戦隊の変化の可能性も見ることができる。戦隊好きは絶対に見た方が良いと思うし、戦隊を見たことがない人でも学園ミステリードラマの中にある戦隊らしい面白さみたいなものを感じることができると思う。

数々の歴史の中で様々な特撮ヒーローが登場したが、令和の時代になっても『ザ・ハイスクール・ヒーローズ』のような新しい戦隊が見れるとは..。これだから特撮は本当に面白い。