「君の名は。」を見てきて個人的に色々と率直に思ったこと。

絶賛大人気上映中の「君の名は。」を見てきた。新海誠監督の新作ということで前からチェックしていたのだが、正直ここまで流行るなんて予想外だった。アニメに詳しい人しか知られてないような監督なので、ジブリのようにネームバリューがあるとは思えないし、やはり「君の名は。」という映画自体に人を動かす何かが詰まっているように感じた。

 

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色々な感想が飛び交っているが、個人的な感想としては面白かった。新海誠作品は「秒速5センチメートル」と「雲の向こう、約束の場所」を何年か前に視聴したぐらいなのだが、その2作品を見たうえでの印象としてはまず絵がとても綺麗、劇中の音楽が耳に残る、全体的に雰囲気がゆったりしてる、物語に起伏があまりなかった、というのが昔見たときに感じた印象だった。

この良く言えば繊細、悪く言えばメリハリがない退屈な物語の雰囲気が個人的にはあまり合わなかったのだが、この「君の名は。」の場合は展開の起伏が大きく、見ててグイグイ物語に引き込まれた。今までの新海作品にはなかったコメディタッチの演出、目まぐるしく変化する登場人物の感情や表情、それに加えて新海作品の良さでもある背景の美しさや映像との相乗効果でよりシーンを印象付ける音楽の使い方などが相まって、とてもテンポがよくワクワクドキドキできたエンターテインメントな映画になっていたのがすごく面白かった。

他の人の感想を読んでみると、「入れ替わりの仕組みがわからない」「お互いの記憶が突然失うのが疑問」、「なぜ二人は好きになったのか?」など色々な意見を目にしたが、ネタバレ込みで自分なりの率直な意見を書いておこうと思う。

 

 

 

 

 

入れ替わりの仕組みがわからない

これは無理に仕組みを理解するのではなく、そういうものだと見たほうが良いと個人的には思う。「僕だけがいない街」でもタイムリープする詳しい仕組みは見ててもよく分からなかったが、この作品はその理由が分からなくても面白いと感じたし、その作品が本当に伝えたい内容が強く物語に出ていて、尚且つ演出や展開で見ている人を引き込む力があれば、細かい部分は気にする必要はないと思う。

君の名は。」も仕組みが分からなくても、他に畳みかけるような展開・美麗な映像を全然楽しめるので、無理に細かい設定を作って本当に伝えたい内容・見せたい展開に支障が出るよりかは、割り切れる部分の設定は割り切って考えた方がより良い作品になるのだと思った。

 

お互いの記憶が突然失うのはなぜ?

ただの男女の入れ替わりであればお互いのそれまでの記憶を失うのは疑問に思うところがあるが、「君の名は。」の場合はこれにプラスして3年間の時間のズレというものがある男女の入れ替わりである。この時間がずれている状態での入れ替わりはある意味現在を変える過去へのタイムリープでもあるので、個人的な考察としては無理に今を変えようとしていることの弊害がこの記憶喪失に繋がっているのだと思った。SF的な考えなのだが、現在の状況を変えるために過去に戻って未来を変えようとしても時間という概念がその変化を許さず、結果変化してない正しい未来に収束していく見えない力が2人の間には働いていたのだと思う。

ただこの見えない巨大な力が2人の間に存在しているからこそ、それに抗おうとする2人のがむしゃらな姿は応援したいと思うし、それを乗り越えたときに2人が出会うその瞬間はまさに奇跡のようなカタルシスを感じることができたのだと思うので、この記憶を失う設定は「君の名は。」には必要な要素だと感じた。

 

なぜ2人は好きになったの?

この物語は夢をキーとして入れ替わりが生じている。普段はなんでもないような人でも夢で出てきたらなぜかすごく気になってしまう・惹かれてしまう、そんな経験は誰しも感じたことはあると思う。これはその青春時代に感じるような普遍的な価値を自然と物語に溶け込ませた結果なのだと思った。始めはなんてことないような2人の出会いが徐々に色々な要素が絡み合っていき、終盤中々出会えなかった2人がようやく出会う様子を壮大な夢物語のように描いている。細かく見れば結局どうして好きになったんだろう?と思うかもしれないが、夢にはこのような不思議な体験をもたらす説明できない力があると思えば、全然納得できる終わり方だと思った。

 

 

2人の入れ替わりによる展開が少し複雑で状況を把握できなくなったり、どこか入れ替わりによる矛盾が細かく見ればあるのかもしれないが、そういったことを気にならなくさせるぐらいの勢いみたいなものが「君の名は。」にはあったと思う。

パンフレットの映画評にも青春の奇跡を描いた輝かしい青春映画の傑作と書かれていたと思うが、自分としてもただの青春映画とは違う、青春の爽やかさに不可能を可能にする壮大なファンタジーのような奇跡が見事に融合した新しい青春恋愛映画のように感じた。

一つの作品で様々な展開も楽しめたし、見た後に何とも言えない余韻を残してくれた満足できた映画だった。

 

君の名は。

君の名は。